こんばんみ。
先日SIGMAから、世界最小クラスの新しいフルサイズミラーレス一眼が発表されました。
SIGMAのプロダクトページはこちら。
今回発表されたのは「fp」なるフルサイズミラーレス一眼カメラ。
少し前にLeica・SIGMA・Panasonicは「Lマウントアライアンス」を結び、3社協業でLマウントのカメラ・レンズを開発していくと発表しましたが、このカメラもその一つでしょう。
fp最大の特徴は、フルサイズイメージセンサーを搭載したレンズ交換式カメラでありながら、パスポートに隠れるほど小さなコンパクトボディ。
本体サイズは11.26(幅)×6.99(高さ)×4.53(奥行)cmだそうで、SONYの高級コンデジRX1にサイズ感ですね。
SIGMA開発のデジタルカメラと言えば高解像なFoveonセンサーが特徴ですが、本モデルでは裏面照射型のベイヤー配列のセンサー(最近のデジタルカメラでは一般的なタイプ)が使用されているとのこと。
Foveonセンサー搭載のLマウントカメラについては別途開発中だとか。
fpの特徴
■世界最小・最軽量のポケッタブルフルフレーム
いつでも気兼ねなく撮れるサイズ感と、画質に妥協無く撮影できるフルサイズセンサーを両立しています。
握りやすいグリップや上部に飛び出したファインダーがありませんが、あえてそういった物を廃することでコンパクトに収めると同時に、自由にパーツを付け足してくださいという「変幻自在の拡張性」へと繋がるのでしょう。
軽量なので単体で持ち歩くときはもちろん、ジンバルなどに搭載して手持ちで撮影する時も腕の辛さが軽減されるかもしれません(笑)
■変幻自在の拡張性
SIGMA純正レンズはもちろん、自社・他社を問わず多様なアタッチメントを付け替えて自由に組み合わせられるオープンでリベラルなシステムと、どんなシーンやニーズにも対応できる変幻自在な拡張性を実装しています。
ボディの3Dデータも公開予定だそうで、様々なメーカーからアクセサリーやケージなどがリリースされることが期待できます。
プロモーション映像でも社外製のマウントアダプターを使ってオールドレンズを使用している描写もあり、フルサイズミラーレスに対してユーザーが求める使い方に合わせてきた形になりますね。
(SONYも旧モデルでは自分で社外レンズの補正プロファイルを作れるAppがあったりして優しいですね)
■本格的で自在な撮影機能
本格的なスチル撮影と映像撮影の機能を指一本で切り替えるだけで直感的に操作できるUIと、スタイルやジャンルに縛られないシームレスでクリエイティブな道具を実現。
fpは本体上部に「CINE||STILL」と書かれたスイッチが設けられており、これを切り替えることでスチル撮影と動画撮影のモードをスムーズに切り替えられるそう。小さいカメラだとこういった切り替えがメニュー画面の中に盛り込まれていたりしますが、物理的なスイッチが設けられていることですぐに切り替えられますし、電源オフの状態でもどちらのモードになっているかわかるのも良いと思います。
UIもスチル撮影用と動画撮影用でそれぞれに合わせた表示が出るようになっているそうで、まさに1台2役です。
民生向けのカメラとしては非常に珍しく、12bit CinemaDNG(RAW)に対応。
データが極めて大きいため、USB接続した外付けSSDに記録するようになっています。
これによりlog撮影以上に後から編集しやすい動画を撮影することができます。
ただ外付けSSDはバスパワーで駆動するため、バッテリーの減りは気になるところ。本体のUSB端子は1つだけのようなので、SSDに記録しながらモバイルバッテリーから給電…というのは無理のよう。それともUSBハブのようなものを使えばいける…?
業務用シネマカメラの準じた機能を搭載しており、シャッター速度や露出、色情報の表示、ゼブラパターンの表示などシネマカメラと併用しやすくなっています。
また、ラージフォーマットのシネマカメラの画角などを確認できるディレクターズビューファインダー機能を搭載。ロケハンや位置決めに便利そうです。この辺はまさに映像制作のプロのための機能ですね。
■撮影を支える機能
大型のヒートシンク搭載&放熱塗料を採用により、高い放熱性を実現。長時間の撮影でもオーバーヒートが起きにくく安定した撮影ができるとのこと。
自分はSONYのカメラを使用していますが、やはり夏場などに屋外で4K動画を撮るとオーバーヒートしやすいんですよね…。fpがどれだけ放熱性が高いのか現段階ではわかりませんが、現状大手メーカーのフルサイズミラーレスにこのようなヒートシンクが搭載されているものは無いので期待が高まりますね。
カメラ本体の42箇所に防塵防滴用のシーリングを採用。防塵防滴構造のレンズと組み合わせることで雨や砂塵の舞う環境でも使用可能とのこと。
動画撮影でHDMIやUSB端子を使用するとなると防塵防滴性は失われてしまいますが、少なくとも持ち運び時は安心です。
ボディ両側のストラップ金具は三脚と共通の1/4インチサイズのネジを採用しています。
金具を外して縦位置で三脚に固定したり、底面にストラップ金具を付け替えて縦持ちにしたりと自由度が高いのも特徴。
スチル撮影に使うならストラップが欲しいですが、動画撮影時にケージなどに取り付けるとなると邪魔ですよね。そんな時に金具ごと外してしまえるというのは助かります。
■フルタイム電子シャッター
あえてメカシャッターを排除することで、シャッターショックや音、タイムラグなどを限りなく減らしています。
メカシャッターの無いシンプルな構造により小型化や信頼性の向上にも貢献しているとのこと。
カメラが小さくなるほどホールド感が失われて手振れも大きくなりますので、シャッターショックが減るのは良さそうですね。
ただ、電子シャッターのみになるということはローリングシャッターによる歪みが出るということです。動きモノの撮影には向かないと思われます。(こんな小さいカメラで動きモノを撮る人がいるのかは置いておいて…)
■充実した画像・映像表現
近年のハリウッド映画で使われているカラーグレーディングを参考にした「ティールアンドオレンジ」まるカラーモードを搭載。公式の作例を見た感じリバーサルフィルムのような雰囲気で、レトロな風合いが楽しめそうです。
現像ソフトSIGMA Photo Proに搭載されていたFill Light機能をカメラ自体に搭載。
ハイライトの明るさはそのままで、シャドウ部のみ自然に引き上げることができます。
RAWでも使えるのは不明ですが、明るい陽射しの下など、明暗が激しいシーンで便利そうです。
トーンカーブを任意に設定できるトーンコントロール機能も搭載。現場で目で見たイメージに近い状態で撮影できるのはありがたいです。
ピント機能では顔/瞳優先AFを搭載しており、人物の撮影でもスムーズなピント合わせが可能。もちろんフォーカスピーキング機能もあるので、緻密なマニュアルフォーカスもしやすいようになっています。
また個人的に良いなと思ったのが多彩なマルチアスペクト。
[21:9] / [16:9] / [3:2] / [A判 (√2:1)] / [4:3] / [7:6] / [1:1]と7種類もの縦横比が用意されています。
21:9で撮影して映画のように仕上げることもできますし、印刷に便利そうなA判まで備えています。
スマホアプリなどで作れる一部分だけが動く動画「シネマグラフ」をカメラ内で作れるのもユニーク。
編集画面などが公開されていないので詳しいことは謎ですが、どうやって編集するんでしょうね…?
スペック比較
fpのプロダクトページから個人的に重要そうだと思ったスペックを抜き出してみました。
参考のため、フルサイズミラーレスでスチル・動画兼用として人気なα7IIIのスペックも掲載しています。
SIGMA fp | α7III | |
有効画素数 | 2460万画素 | 2420万画素 |
シャッター速度 | 1/8000~30秒・バルブ | 1/8000~30秒・バルブ |
iso感度 | 100~25600 (拡張:6~102400) |
100~51200 (拡張:50~204800) |
AF形式 | コントラスト検出方式 | 位相差検出方式+コントラスト検出方式 |
手振れ補正 | 電子式 | イメージセンサーシフト方式5軸補正 |
連写速度 | 18コマ/秒 (電子シャッター) |
10コマ/秒 (メカシャッター) |
最大撮影コマ数 (バッファ?) |
12コマ (RAWかJPEGか不明) |
163コマ(JPEG) 89コマ(RAW) 40コマ(非圧縮RAW) |
フラッシュ同調速度 | 1/30秒 | 1/250秒 |
動画記録形式 | CinemaDNG 4K フレーム数不明 (ポータブルSSDに記録) MOV(ALL-I/GOP) 4K フレーム数不明 |
XAVC S 4K 30p・24p XAVC S フルHD 120p・60p・30p・24p AVCHD フルHD 60i |
動画機能 | ディレクターズビューファインダー機能 業務用シネマカメラに準じた表示 シネマグラフ機能 |
– |
背面液晶 | 3.15型 210万ドット タッチ対応 |
3.0型 92万ドット タッチ対応 |
サイズ | 11.26(幅)×6.99(高さ)×4.53(奥行)cm | 12.69(幅)×9.56(高さ)×7.37(奥行)cm |
質量(本体のみ) | 370g | 565g |
スペックを見ていてネガティブな意味で気になった点があるのですが、まずひとつ目が最大撮影コマ数。
おそらく連写時のバッファのことかと思いますが、なんとたったの12コマとの記載が。
RAWなのかJPEGなのかなど詳しい記載ありませんが、これって18コマ/秒で連写すると1秒も経たないうちにバッファが詰まってしまうのでは…?
ローリングシャッターのことと合わせても、とことん動きモノには向かないカメラのようです。
ふたつ目がフラッシュ同調速度。
フォーカルプレーンシャッターを搭載したカメラは、シャッタースピードがある一定以上になると先幕と後幕が同時動きシャッターが全開にならなくなります。その状態でフラッシュを使うとシャッター幕が被った部分が影になって写ってしまうわけですね。
そのためスペックにフラッシュを使って大丈夫なシャッター速度の上限がフラッシュ同調速度として記載されており、α7IIIの場合それは1/250秒です。
ところがfpはそのフラッシュ同調速度がなんと1/30秒との記載が。
一般的にはフラッシュを使うときは1/125秒にすると思うのですが、このカメラだとそれが通用しないんですね…。
幸いにもfpはisoの下限が驚きの6なので、isoを下げることで1/30秒のシャッター速度でも露出を調節できると思いますが、慣れるまで混乱させられそうですね。
ポジティブな意味で驚いたのが背面液晶のスペック。
最近のカメラですとCanonのEOS 5D MarkIVの背面液晶162万ドットがすごい綺麗だな~と思っていたのですが、それを上回る210万ドット!
マニュアルでのピント合わせも捗りそうです。
上の表には書いていませんが、fpの背面液晶は縦横比が3:2。α7IIIの正確な比率はわかりませんが4:3に近い感じなので、上下に黒帯がついて撮影時もプレビュー時もあまり写真が大きく見えません。
3:2なら写真がいっぱいいっぱいに表示されるのでより大きく確認できるはずです。
私感
最近動画撮影の勉強をはじめていた自分には実にタイムリーなカメラでした。
ただLeica M-E(TYP240)をすでに予約しているので、すぐにfpに回すお金は無い…。
今持っているα7RIIIの置き換えになるかというと、スチルの機能が明らかに弱いのでαを売り払ってこちらに乗り換えというのもちょっと無理ですね。
当分はαでコツコツと動画撮影の修業を積んで、様子見しようかなと思います。
発表後しばらく公式のプロダクトページにアクセスが殺到して見れないほどの盛り上がりを見えるfp。
WEBメディアなども大盛り上がりを見せていますが、話題性だけで飛びついて買うと後悔しそうなカメラだなと感じました。
と言うのも、
■スチル用のコンパクトカメラではない
コンパクトな作りから、フルサイズ高級コンデジのように使えるのでは!?と考えている人も多いはず。
しかもレンズ交換できるわけだから必要な時は大口径のレンズやズームレンズを付けることも…!
しかし、写真専用のカメラにするにはやはりメカシャッターが無いのは気になりますし、フラッシュ同調速度も遅すぎる。
ファインダーが必要な場合は大きなLCDビューファインダーを付けなければならないし、他社のフルサイズミラーレスと比べてダイヤルやボタンも少なめ。
また現状コンパクトのLマウントレンズは、同時期に発表されたSIGMAの45mm F2.8とLeicaのAPS-C用のレンズだけです。
大きめのレンズを付けるとなると持ちづらいのでグリップを付け足してかさばることにもなるでしょう。
結局のところ餅は餅屋、レンズ交換式のスチルカメラが欲しいなら無難にSONY・Canon・Nikonを、コンパクトさを追求するなら高級コンデジを買ったほうが無難で安く収まるんじゃないかなと思います。
■Youtuberにも向かないのでは
動画がすごいカメラとなると黙っていないのがYoutuberの方々でしょう。
きっと発売直後Youtubeは開封動画や試してみた系の動画で持ちきりになると思いますが、そのあと使い続ける人はどれだけいるのでしょうか…?
チルト液晶・バリアングル液晶ではないので単体での自撮りには不向きですし、トークなどを撮るだけならCinemaDNGは役不足ですしデータも大きすぎる。また現状XLR端子のマイクを繋げる純正アクセサリーも無いため、良い音を録ろうとするなら外部レコーダーが必要です。
一見手軽なカメラのようで、そうでもない。
用途がハッキリしている人にはバッチリはまって、ふわっとした状態で買うと器用貧乏。
そんなカメラなんじゃないでしょうか。
以前α7IIIが安くて高性能ですごい!と話題になって多くのブロガー・Youtuberが購入していましたが、自撮りができないとか動画の手振れ補正がダメだとかトンチンカンなレビューが散見しました。
そりゃそうだ…だってそれはスチルがメインのカメラなんだから…。
今回は逆のことが起きそうな気がします。高級コンデジとして買ったけど使いづらい!と。
だってこれ、動画がメインで拡張して使うためのカメラだと思いますから…。
そしてマ○プカメラには美品のfpが並ぶでしょう。
そしたらそれを頂戴しようと思います。